2021/08/23

日本公認心理師協会の専門認定制度への私見②

 の続きになります。
トピックごとのツッコミというか半分揚げ足取りみたいな感じになりますが、思ったことをまたつらつらと。

目 的 ?

日本公認心理師協会のホームページでは、『公認心理師の生涯学習制度について』という見出し(タイトル?)になっています。
「規程」の第1条でも『公認心理師の資質向上と生涯にわたっての職業的発達に資するため』とあるので、専門認定制度は、生涯学習制度の一環として位置づけられてるということですね。

生涯学習、これは必要ですね。公認心理師法第43条にも「資質向上の責務」として定められています。
公認心理師である以上、その資質向上に努めなければなりません。法律にも規定されているんだから、当たり前のことです。

この当たり前の研鑽の一つとして、日本公認心理師協会で『生涯学習制度』をいうのを作ってみたよ、という事でしょう。その学習の成果を示すものとして専門認定の資格を与えるよと。

ただひっかるのが、ホームページにある
『会員が生涯にわたり知識及び技能学習の向上を可能とするために、2021年度より専門認定制度を開始します。』
という書き方です。
いや、単に書き方の問題だと思いますが、「専門認定制度がないと生涯学習は不可能」みたいな。認定制度は生涯学習の手段なの?と感じてしまいます。

別に、認定制度がなくても研鑽はしますよね?生涯学習は可能ですよね?認定されないと研鑽しないワケないですよね?
「お前ら、餌がないと研鑽しやがらねぇだろ」そんなことはないですよね?

日本公認心理師協会の組織図を見てみます。
左の方に「生涯研修委員会」があって、右の方に「専門認定委員会」がありますね。
そう、生涯学習(研修)と専門認定って本来独立したモノですよね。
生涯学習のために専門認定がある訳じゃなくて、専門認定のために生涯学習がある訳でもない。だからこそ委員会も分けているんじゃないでしょうか。
今回の生涯学習制度・専門認定制度は、それを無理にこじつけようとしてる感じがするんです。

だから資格商法とか揶揄されるんだよ

対 象 者

専門認定の対象者は、日本公認心理師協会の「正会員」に限定されるらしいです。
理由としては規程第3条に『本協会倫理綱領の遵守を求めるため』とあります。
いや、専門認定してるのも日本公認心理師協会なんだから、認定者に倫理綱領の遵守を求めたらよいだけの話じゃないですか。
倫理綱領の方を「本協会の会員及び本協会が認定する認定専門~、認定専門指導~はこの綱領を遵守すること」とかに改訂すれば、正会員にしか倫理綱領の遵守を求められないということはないでしょう。

こうした専門認定をエサに会員を増やしたいという意図が透けて見えるのは私だけでしょうか。
更新制のある専門認定なんだから、むしろ会員でなくても認定を受けられるようにして、更新に必要な研修等の費用を会員/非会員で差別化した方が会員増えるんじゃないかな。と思ったりもします。
会員にならないと認定を受けられない。ではなく
間口を広げて、「せっかく認定を受けたから更新しよう、そのためには会員になっておいた方が得だな」と思わせる方がいいんじゃないかな。

まぁ、認定を受けようとするくらいの人だったら、普通に入会するか。

研修の種別

「認定専門公認心理師」の認定を受けるためには

①導入研修:基本知識や生涯研修のあり方などを理解するための研修
②専門研修Ⅰ:実務を行う基盤となる知識と技術の修得するための研修
③テーマ別研修(20単位):分野別、課題別のテーマに関して学修を深めるための研修
④専門研修Ⅱ:より応用的、実践的な力を修得するための研修

の受講が必要です。
5年ごとの更新のためには
テーマ別研修25単位以上の受講が必要です。

そして「認定専門指導公認心理師」の認定を受けるためには

①エキスパート研修:各分野でのエキスパートとして複雑な事例への対応を行う力、実習生や若手の専門家の指導に関する諸課題への指導ができる力、プロフェッショナルポートフォリオの作成に取り組み、自己研鑽の計画を策定する力を養成する研修。
②テーマ別研修(25単位)

の受講と、プロフェッショナルポートフォリオの提出が必要です。
5年ごとの更新のためには
テーマ別研修25単位以上、エキスパート研修の受講とプロフェッショナルポートフォリオの提出が必要です。

テーマ別研修は1単位≒1時間としてだいたいの必要時間数が分かります。分野別・課題別のテーマに関する研修というのも、ようするにこれまでよくあるような研修ということでしょうからイメージしやすいです。

その他はどうかなー。導入研修、専門研修Ⅰの説明だけを見ると、これって養成課程でやる事じゃないの?と思ってしまいます。
資格取得後の受講を前提としているんだから、もちろんそんなことはないと思います、思いたいです。でも、どんな内容なのか具体的にイメージできないですね。どのくらいの時間数なのかも気になるところです。
専門研修Ⅰ『知識と技術の修得するための研修』とあるので、知識だけじゃなくて技術も習得する、となると座学だけじゃなくて演習やワークショップも取り入れるのでしょうか?そうすると、1日で終わるような研修ではないかもしれないですね。専門研修Ⅱ、エキスパート研修となると、内容ももっと深いものになるので、もっと時間もかかるかもしれないなとも思います。

1日数時間の研修で、「はい、知識と技術が身につきましたー!」ってことはさすがにないでしょう。ないと思いたい。
形式としても、一方向的な教授ではなく、双方向的なアクティブラーニングが必要となるでしょうね。そうすると、e-Learningやアーカイブ配信のような形で行うのはあまり適さないかもしれません。リアルタイムで参加する形になるんでしょうね。
そうすると、参加する時間を確保するだけでも結構大変そうだなー。

テーマ別研修を除けば
 ・導入研修
 ・専門研修Ⅰ
 ・専門研修Ⅱ(資格登録後3年目から受講可能)
 ・エキスパート研修(資格登録後8年目から受講可能)
という順で生涯学習が進んでいくようですね。

どうなんかな、、「生涯」学習というには、ステップが少ないような気もしますが。
でもまぁ、認定専門指導公認心理師を更新するにはエキスパート研修を5年ごとに受講する事になるので定期的に内容がアップデートされるのでしょうし、たぶん認定専門指導~の更に上位にも認定資格を作る気もあるのかもしれません。

それと、専門研修Ⅱとエキスパート研修は資格登録後の年数で「受講できる」と制限がかかってるのも気になる所ですね。この年数はどこから出てきたんかな。

エキスパート研修で「指導」という内容も出てくるわけですけど、この認定制度とは別に、公認心理師法施行規則第3条第4項に定める、実習指導者になるための要件は
 ・資格取得後5年以上の実務
 ・文部科学大臣及び厚生労働大臣が定める基準を満たす講習会
なので、エキスパート研修はもう少し早く受けられるようになってもいいんじゃないかと思ったりもします。もしくは、専門研修Ⅱの内容に指導を入れたり。

内容が定かでないので、蓋を開けてみないと分からないことだらけですが、今出てる情報だけだと、生涯学習制度という割には、なんかスッカスカやなぁ、という印象です。

経過措置

認定制度には経過措置があります。
経過措置の対象となるのは、D~Gルートで受験した人のようです。
この措置の理由としては、ホームページで『公認心理師の中には、すでに5年または10年以上の心理専門職としての臨床実務経験を持つ方もいらっしゃいます。』と書かれています。

D~Gルートの中で、それだけの経験を既に持っているというのは
・D1ルート:法施行時点で既に大学院を修了しており既習科目の読み替えができる者
・Gルート:法で定める業を5年以上行っている者(現任者講習会受講も必要)
がほとんどだと思います。
D2~Fルートは、法施行時に在学中だったり、法施行後に大学院又は2号施設に進む人なので、この人たちが既に5年または10年以上の実務経験を持つというのは、いたとしても例外的だろうと思います。

一方で、第1回試験から合格者が出ているCルートの人は、この経過措置の対象外という事になっています。
Cルートというのは海外の大学や大学院で心理学を学んだ人を対象とする受験区分です。
日本の大学や大学院ではないけども、A・Bルートと同等以上の内容を学んだという人です。

D~Gは受験資格の特例措置です。
D~Fルートは、既習科目の読み替えを認めて、A・Bルートと同等くらいの事は学んだという事にしましょうというもの
Gルートは、すでに5年以上働いてるんだったら受験資格は与えようというもの

Gルートは現任者措置ですが
C及びD~Fルートというのは、いずれもA・Bルートと同等の事を学んだとみなすという考え方で、大きな違いはありません。
D~Fルートは経過措置の対象となって、Cルートは対象外。これは不公平じゃないかと思います。

何でこんなことになったか。
憶測ですけど、受験資格の特例措置を機械的に認定制度の経過措置に当てはめただけなんじゃないかと思います。

少なくともこの経過措置の部分については
受験資格について良く分かっていない人が、実態を知らないまま、適当に作ったんだな。
と思うし、極めて杜撰だと感じます。

受験区分、実務経験年数の証明は?

経過措置を受けるためには、受験区分が明らかにならなければなりません。
認定専門公認心理師の認定を受けるには、5年以上の実務経験が明らかにならなければなりません。
認定専門指導公認心理師の認定を受けるには、認定専門公認心理師の認定を受けた後の、特定の分野における5年以上の実務経験が明らかにならなければなりません。

これ、どうやって証明するのでしょうか。

「公認心理師の登録を受けてから〇年以上」であれば、資格証に登録年月日は記載されているので証明可能です。
しかし、必要なのは「受験区分」や「実務経験年数」です。

受験区分はどう証明するのでしょう。
実務経験はどう証明するのでしょう。

本人の自己申告だけで審査するのでしょうか。
試験機関である日本心理研修センターに受験区分を問い合わせるのでしょうか。
勤務施設に実務経験年数を問い合わせるのでしょうか、あるいはGルート出願時のように勤務施設の代表者に「実務経験証明書」を作成してもらうのでしょうか。

自己申告で済ませるなら、そもそもそんな基準を設けなければいいのに。
認定要件に「5年以上」とかせずに、必要な研修の受講「目安」として「〇年以上程度」くらいにしておいて、申請者の受講履歴と能力によって審査すればいいんじゃないかな。
そしたら経過措置なんか設けずに済むのに。

ま と め

この制度、ちゃんと考えて作られたのかな?

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日本公認心理師協会の認定資格制度についての私見③

  ① 、 ② ではわりと批判的な私見を述べました。 批判だけじゃなんかアレなんで、好意的な意見も述べてみようと思います。 コンピテンシーモデルに基づいてるよ 日本公認心理師協会HP「 公認心理師の生涯学習制度について 」の下の方に、「専門認定に関するQ&A」pdfへのリンクがあ...